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嘘が一切ない世界って理想っぽいけど、たぶん地獄だと思う

誰もが本当のことしか口にしない世界は清らかで理想的、と思えるかもしれない。しかし、そんな社会が実現したら、かえって息苦しくて成り立たなくなる。人づきあいは、言わずにおく気遣いや、相手を傷つけないための穏やかな言い換えによって支えられている部分が大きい。友人の料理が口に合わなくても「おいしい」と返し、疲れた相手に「元気そうだね」と声をかける。こうした小さな嘘は、悪意どころか関係を保つための潤滑油だ。すべてを正直に告げれば、病の告知や落第の宣告のような場面でも配慮の余地が消え、真実の名のもとに人を平気で刺すことになる。心の中で思ったことがそのまま表に出る世界では、誰もが互いの本音に絶えずさらされ、安心して人と関わることができない。嘘がつけないということは、自分を守る最後の壁を失うことでもある。もちろん、人を欺いて陥れる悪質な嘘は別で、そこは正されるべきだ。ただ、あらゆる嘘を消し去った世界は、誠実というより残酷で、人の弱さを受け止める余白を欠いている。